ルイスレザーは、現在では英国を代表するレザージャケットブランドのひとつとして知られています。しかし、その歴史は単なるライダースジャケットのブランド史ではありません。航空、モーターサイクル、ロッカーズ、音楽、パンクなど、イギリスのさまざまなカルチャーと関わりながら現在のLewis Leathersへとつながっています。
この記事では、1892年から続くルイスレザーの歴史をたどりながら、なぜLewis Leathersが現在まで特別な存在として語られているのかを整理します。
この記事の要点
- 始まりは1892年、ロンドンのグレート・ポートランド通りにあった紳士服店「D Lewis」
- 通りが自動車店街になると運転用・飛行用の服へ進み、航空服のブランド名「AVIAKIT」が生まれた
- 1956年のブロンクス、1958年のライトニングがロッカーズの定番になり、1970年代にはパンクの象徴に
- 1993年に創業の地の店を閉めたが、2003年にデレク・ハリスが引き継ぎ、旧モデルの復刻で復活した

年表で見るルイスレザー
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1892年 | デイヴィッド・ルイス・アイザックスが、ロンドンのグレート・ポートランド通りで紳士服店「D Lewis」を開く |
| 1900〜1910年代 | 通りに自動車のショールームが並び「モーター・ロウ」と呼ばれるように。運転用のコートや手袋、ゴーグルを作り始める |
| 1920〜30年代 | 飛行服のブランド名「AVIAKIT」を使い始める(資料により1929〜1930年) |
| 第二次世界大戦 | 英国空軍(RAF)向けの飛行用品を供給 |
| 1956年5月 | ブロンクス発売。1930年代の飛行服をもとにした英国版ダブルライダース |
| 1958年 | ライトニングがラインナップに加わる |
| 1959年 | 若いライダーのための「59クラブ」がロンドンで誕生。のちにルイスレザーと結びつく |
| 1960年 | 「Lewis Leathers」の名前を登録 |
| 1973年 | サイクロンが店頭に登場 |
| 1970年代後半 | シド・ヴィシャス、ジョー・ストラマーらパンクのミュージシャンが愛用 |
| 1980年代前半 | 創業家が会社を手放す(資料により1980〜1982年)。その後も経営者が変わる |
| 1993年 | グレート・ポートランド通りの店を閉める |
| 2003年 | デレク・ハリスが6代目のオーナーに。ロンドンのホイットフィールド通りに店を構える |
| 2017年 | 創業125年。東京・神宮前に旗艦店が開店(Grailedの記事) |
ルイスレザーは1892年に始まった
Lewis Leathersの歴史は1892年に始まります。創業当初は現在のようなモーターサイクル専門ブランドではなく、ロンドンのグレート・ポートランド通りで既製の紳士服を売る「D Lewis」という店でした。創業者はデイヴィッド・ルイス・アイザックスとされ、店名の「ルイス」は彼の名前から取られています。
転機は通りそのものの変化でした。20世紀に入るとグレート・ポートランド通りには自動車やオートバイの店が集まり、「モーター・ロウ(自動車通り)」と呼ばれるようになります。店はそこに集まる運転者や飛行士のために、暖かいコートや手袋、ゴーグル、帽子を作るようになりました。店は1993年まで、この通りで営業を続けています。
AVIAKITという名前
Lewis Leathersを語るうえで欠かせないのが「AVIAKIT」という名前です。「航空用の装備(aviation kit)」を縮めた言葉で、飛行服やその付属品のブランド名として使われ始めました。第二次世界大戦中は英国空軍のパイロットたちが、ここでブーツや手袋、ゴーグルを買い求めています。この名前は後にLewis Leathersのモーターサイクルジャケットにも使われるようになり、現在もタグに残っています。
現在のLewis Leathersのヴィンテージジャケットを見ると、タグの違いから年代やモデルを読み取れる場合があります。タグは単なるブランド表示ではなく、長い歴史を読み解く手掛かりのひとつです。

モーターサイクルウェアへの発展
戦後のイギリスではモーターサイクル文化が広がり、レザージャケットはライダーにとって実用的なウェアであると同時に、スタイルを表現するアイテムになっていきました。戦後すぐは放出された空軍の服をライダーに売り、物資の配給制が終わると自社のラインを広げていったと伝えられています。一流のレーサーやマン島TTレースの選手のスポンサーも務め、ライダーの信頼を集めました。
その代表が、1956年5月に発売されたブロンクスです。1930年代の飛行服を作り直したダブルライダースで、アメリカのSchottパーフェクトに当たる英国の定番とも言われます。続く1958年にライトニング、1973年にサイクロンが登場し、現在まで続く代表的なモデルがそろっていきます。

1950年代とTon Up Boys
1950年代のイギリスでは、オートバイに乗る若者たちの文化が広がりました。いわゆるTon Up Boysは、時速100マイル(「トン」)を出すことを誇りにした若者たちで、レザージャケットもその象徴的なスタイルのひとつになりました。公式サイトによると、ルイスレザーは1950年代半ばからこうした若いライダーに向けた服作りを始めています。
1959年には、若いライダーのための集いの場「59クラブ」がロンドンで生まれます。ルイスレザーはこのクラブと結びつき、そのジャケットはメンバーの非公式な制服のようになっていきました。この時代から、レザージャケットは単なる防護服ではなく、音楽やファッション、若者文化と結びついた存在になっていきます。
RockersとLewis Leathers
1950年代後半から1960年代にかけて、Ton Up Boysは「Rockers(ロッカーズ)」と呼ばれるようになります。レザージャケット、ブーツ、デニム、オートバイというスタイルは、その後のファッションにも大きな影響を与えました。1964年には、ブライトンなどの海辺でモッズとロッカーズが衝突する騒ぎも起きています。
Lewis Leathersはこの時代のモーターサイクルカルチャーと結びつきながら、ライダースジャケットのブランドとして認知されていきました。1960年には「Lewis Leathers」という名前も正式に登録されています。

ライダースから音楽・パンクへ
Lewis Leathersのレザージャケットは、モーターサイクルの世界だけでなく音楽やファッションの世界にも広がっていきました。1960年代にはジョン・レノンやエリック・クラプトンが着ていたと伝えられています。
特に1970年代後半のパンクとの結びつきは、現在のLewis Leathersを語るうえで重要な要素です。公式サイトは、ライトニングがクラッシュやセックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズに愛用されたこと、ドミネーターがシド・ヴィシャスの1着として知られることを紹介しています。サイクロンはプリテンダーズのクリッシー・ハインドも着ていました。
レザージャケットにスタッズやパッチなどを加え、自分自身のスタイルを作る文化は、既製品をそのまま着るだけではないレザージャケットの楽しみ方を広げました。

低迷期とデレク・ハリスによる復活
1980年代に入ると創業家が会社を手放し、経営者が何度か交代します。1993年には、100年以上続いたグレート・ポートランド通りの店も閉められました。
ここで登場するのがデレク・ハリスです。公式サイトによると、彼は1958年生まれで、ロンドンのポートベロー・ロードで古着店を営んでいた人物。1991年からルイスレザーの古いジャケットを調べ、日本向けにヴィンテージを集めるなどしながら、約12年の研究を経て2003年に会社を買い取り、6代目のオーナーになりました。古い型や広告を整理し、名作を当時の仕様で作り直したことが、現在の人気の土台になっています。
ハリスはロンドンの店を、創業の地に近いフィッツロヴィア地区のホイットフィールド通りに構えました。日本との縁も深く、日本にも拠点が置かれ、東京にも直営店があります。公式の書籍『Wings, Wheels and Rock ‘n’ Roll』は、日本人の田中林太郎氏が編集と撮影を担当し、日本で印刷されています。
なぜLewis Leathersはカルチャーと結びついたのか
Lewis Leathersの特徴は、ジャケットそのものだけでなく、それを着てきた人々の歴史と一緒に語られてきたことです。
- 航空ウェアとしてのルーツ
- モーターサイクルウェアへの発展
- Ton Up BoysやRockers、59クラブとの関係
- 音楽・パンクカルチャーへの広がり
- スタッズやパッチなどによるカスタム文化
そのため、Lewis Leathersのジャケットを見るときは、革の種類やサイズだけでなく、どの時代のどのカルチャーと結びついていたのかを知ることで、さらに深く楽しむことができます。
現在のLewis Leathers
現在のLewis Leathersでは、LightningやCycloneをはじめとする定番モデルに加えて、Western Jacket No.988のようなカジュアルモデルも展開されています。長い歴史を持ちながら、過去のモデルを現在のラインナップにつなげていることも特徴です。
| モデル | 登場 | 形 |
|---|---|---|
| ブロンクス | 1956年 | ダブルライダース |
| ライトニング No.391 | 1958年 | ダブルライダース(サイドベルト4本) |
| ドミネーター No.551 | 1960年代初頭 | センタージップ |
| コルセア No.60 | 1962年 | センタージップ |
| サイクロン No.441 | 1973年 | ダブルライダース(ウエストバンド) |
また、革やライニング、パッチなどを選ぶカスタムオーダーによって、自分の一着を作り込めることもLewis Leathersの魅力です。

YouTubeでルイスレザーの歴史とカルチャーを解説
今回の記事の内容を、YouTubeでも詳しく解説しています。ルイスレザーの歴史だけでなく、その背景にあるモーターサイクルや音楽などのカルチャーにも触れています。
ブランド史と個別モデルの来歴を分ける
Lewis Leathersの公式書籍案内はブランドの長い歴史を扱い、各モデルの公式ページは製品の登場背景を説明しています。ブランドの創業年と、現在着られているジャケットの誕生年は別の情報です。
音楽家の着用例を参考にする場合も、写真の年代、モデル名、当時の仕様と現在の仕様を分けて考えましょう。同じモデル名でも、革や裏地、フィットの選択によって着用感が変わります。
歴史から一着を選ぶなら、まず好きな外観を持つモデルを絞り、次に現行品の仕様と試着で判断します。文化的な背景への好みと、日常に必要な収納・動きやすさ・着丈を両立させる選び方です。

よくある質問
Q. 「ルイス」は人の名前ですか?
はい。創業時の店名「D Lewis」は、創業者デイヴィッド・ルイス・アイザックスの名前から取られています。「Lewis Leathers」という名前が登録されたのは1960年です。
Q. AVIAKITとLewis Leathersは別のブランドですか?
同じ会社のブランド名です。AVIAKITはもともと航空服の名前として使われ、後にモーターサイクルジャケットのタグにも入るようになりました。現行品のタグにもその名前が残っています。
Q. パンクのイメージで選ぶならどのモデルですか?
公式がパンクとの関わりを紹介しているのは、ライトニング、ドミネーター、サイクロンなどです。それぞれの違いはライトニングとサイクロンの違い、ドミネーターとコルセアの違いで比べています。
まとめ
Lewis Leathersは1892年から続く長い歴史を持ち、航空、モーターサイクル、Rockers、音楽、パンクなど、さまざまなカルチャーとの関係を築いてきました。
だからこそ、Lewis Leathersの革ジャンは単なる衣類としてではなく、時代やカルチャーを映すアイテムとして見ることができます。LightningやCycloneなどの定番モデルを知るときにも、その背景にある歴史を知っておくとディテールの意味がより分かりやすくなります。

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参考:Lewis Leathers公式|Wings, Wheels and Rock ‘n’ Roll Lewis Leathers公式|Lightning No.391 Wikipedia(英語)Lewis Leathers Grailed|A Brief History of Lewis Leathers
ルイスレザー No.988 ウエスタンジャケットとは?|1960年代から続く名作の歴史とディテール
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